第11回日本手話教育研究大会プログラム


○基調講演

 

「手話言語の研究の進め方 -手話指導と手話言語学の連携-」

 

 独立行政法人産業技術総合研究所 主任研究員

 日本手話学会副会長  末森 明夫 氏

 

 

○研究発表 (順不同)

 

「CLの掌の向きについての考察」海野和子

 

手話学習者はCLの表出において掌の向きに困惑する。一方、手話母語者で あるろう者は適切な掌の向きを無意識に判断して表出している。本発表で は、手話母語者が慣習的に表出しているCLの掌の向きについて考察する。

 


「手話構文の文法化について ~A/わかる/B、A/よい/B~」數見陽子

 

手話学習者は学習過程において、文法化されている手話構文の使い分けが難しく、 適切な場面で表出されないことがある。しかしろう者の場合、慣例的に場面に応じ た構文を判断し表出できる。本発表では、手話構文「A/わかる/B」と「A/よい/B」 の適切な使い分けについて考察する。 また、両方どちらでも使用できる例と片方でのみ使用できる例を明確にすることで、 手話学習者が手話構文の理解を深める一助としたい。

 


「NAの基本原理の解明とインタラクション能力」川島 清

                 

 ナチュラルアプローチ(NA)の目標は伝達技能を身につけることであり、そのためにインタラクションは重要な働きをもつ。 

 ・理解は発話に先行する。 

 ・発話は自然に表出する。 

 ・習得活動が中心である。 

 ・情意フィルターを低くする。 

 以上のことを踏まえ、指導者のインタラクション能力を向上させる方法について分析した。またこれは第2言語習得理論を示唆するものであり、今回はインタラクションと第2言語習得理論の関連性についての考察も含め発表する。

 


「CL構文のエラー表出に関する考察」高橋喜美重


 手話学習者にとって自然なCL表現は難しく、「手型」「位置」「動き」がろう者の表現とは異なることがある。 今回は手話学習者が表す手話語彙〈たくさん〉〈多い〉〈いっぱい〉 の意味を含むCL構文でのエラーを取りあげた。 

 このCL構文の「位置」「動き」に注目し、手話学習者のエラーからCL表現が困難な理由を明確化させ、日本手話の習得段階に合わせた適切な指導方法を考察する。

 


「手話学習者に日本手話で理解させる指導法 ~手話教師が心がけること~」塚原和俊

 
 手話学習者に第二言語の日本手話を習得させるために、ナチュラルアプローチ教授法で指導をおこなっている。その指導は日本手話だけでおこなわれるにもかかわらず手話学習者は日本語に翻訳して理解をしてしまう。それらの例を採り上げ、手話学習者に日本手話のままで理解させる指導法を考察し、さらには手話教師が心がけることも含め発表する。

 


「学生のモチベーションを高めるために ~大学における手話授業~」福光あずさ

 

 現在、大学の教養課程で日本手話を第2外国語として学べる大学が増えている。しかし、その学習環境は行政の手話講習会や民間の手話講座と比べて授業時間数が少ないだけではなく、履修する学生の目的意識や態度も様々である。そのような授業においては、初回の講義を通して言語と深く関わりあう文化を理解させることが重要である。大学における手話授業を通し学生の姿から見えてきたものをふまえて、学生のモチベーションを高めるために講師が導入すべき内容を発表する。